引越しの跡にレモンが染みている
この原稿を書いている今は、まさに事務所移転の最中。荷物の減っていく空間に、会社の代表を務めるようになってからの10年の痕跡がある。嬉しかったこともそう、悔しかったこともそう。若かったからできたこともあるのだろう。それはまるでレモンのような時間だった▼悲哀や苦悩は、新しい土地の養分となって鮮やかな花を咲かせる。そんなイメージを強くして決意した事務所の移転。諸々の手続き、準備、そして投資という手間を抜けた向こうで、僕の毎日はどんな風に詩歌に表されるのか▼ひとつの企業の代表として、ひとりの柳人として、まだ見ない未来に胸が鳴り続けている。
ふあうすと2014年2月号裏表紙