肉親との別離を、僕はよく「千切れる」と表現する。身体の一部、肉片が離れていって再生しない痛みは筆舌に尽くし難い。声にならない絶叫を何度も繰り返してようやく、痛みは背骨のあたりに落ち着いて僕の芯へとなってくれた。背から吹く追い風はいつも温かくて勇気をくれる▼この頃の夕焼けは真っ赤に優しくて、西方に極楽があるといった昔の誰かの気持ちもわかるような気がする。会いたくて、会えなくて、一部になっているのがわかっていて、それでも会いたくて、褒められたくなる自分は、やっぱりまだまだなんだろうな。
風に似た背骨になってくれました
ふあうすと2013年5月号「明鏡府」掲載