子どもの頃にサーカスに連れていってもらった。始まりに出てきたピエロは場を盛り上げてくれて、やがて空中ブランコのあたりでふざけている内に、ステージの中央で動物たちのショーが始まった。気が付けばピエロは消えていて、僕たちの記憶には華やかなステージのことだけが刻まれた。それもまた役割。彼にはどんな労いの言葉があったのだろうと、僕は僕の記憶のなかの数分を訪れては想像する。生きていくために、ひとはそれぞれの役割の仮面を選ぶ。一日の終わりにすべてを脱いだピエロにも、どうか優しい温度に触れていてほしいと願う。
楽屋ではピエロはどんな顔をしてお疲れ様を言い合うのかな